オタゴン無法地帯

Vtuberオタゴンのブログです。動画にするほどじゃないけどツイートには長すぎることを書きます。

バーチャル性生活という概念は必ず破壊されねばならない

“他人どもは、犬のように唾を顎にたらし腹を突き出してのこのこ走っているおれを見ていたが、おれにはかれらの本当に見ているのが、裸のおれであり赤面しておどおどするおれであり、猥褻な妄想にふけるおれ自瀆するおれ不安なおれ臆病者で嘘つきのおれであることがわかった”

大江健三郎『セヴンティーン』より

性的人間 (新潮文庫)

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 先日このようなツイートが目に飛び込んできて、絶句した。

“バーチャル性生活”という奇怪な言葉が、まるで誰もが知っている事実かのように用いられている。“性生活”という言葉にはどこか『できていて当たり前』というニュアンスが含まれるような気がしてならない。というか『したことない人は、投票しないでリプ欄に好きなお寿司のネタ書いてって』というのは、モテない上に金が無くて回転寿司も食いに行けない俺のことをピンポイントでバカにしているのではないだろうか?

1000人以上がこのアンケートに回答したそうだ。つまり1000人以上が、ヤっている。俺はVRC内で性的な行為が行われていると噂程度に聞いたことはあったが、まさかここまで大勢の人間が“性生活”とやらを楽しんでいるとは思わなかった。

俺は大勢のVRCユーザーがこの話題に触れているのを見た。“バーチャル性生活”なんていう突拍子もない概念に、みんなが訳知り顔で言及していた。当惑する俺を独り残して、世界が回っていく感覚。俺は高校時代の教室を思い出す。

UN-GO會川昇脚本集 (ANIMESTYLE ARCHIVE)

UN-GO會川昇脚本集 (ANIMESTYLE ARCHIVE)

 

 會川昇の脚本集を読む俺の席の近くで、男子たちがこそこそと噂話をしている。アイツは童貞を卒業した、隣のクラスのアイツはヤリマンだ、誰と誰がヤッたらしい……。みんな曖昧に他人の話ばかりするくせに、自分が何をやったのかは絶対に明かそうとしない。爬虫類のような汚らしい目をして、他者の性事情に探りを入れる。

卑しい連中だと感じる。こういう話が聞こえてきた時、俺は決まってイヤホンをした。こんな話題に興味はないと、世界に向かって宣言するためだ。しかし、音楽をかけることができなかった。エロい話が気になったから。俺が部屋で家族に見つからないように一人こそこそオナニーしている時に、隣のクラスのあの子を抱いている奴がいるらしい。俺は自分の惨めさに泣きそうになりながら、それでも憎悪する連中の話から耳を離せない。俺はセックスに興味があった。それがみんなにはできて、俺には絶対にできないことだったから。

やがて20歳を過ぎて、“セックスができない”ということが俺の中で恐怖心を伴うようになった。正しく恋愛をして、正しくセックスをする人間になれない俺は社会不適合者ではないのか。俺は狂人なのではないか。恋愛をできないということがその証左なのではないか。

そんな時、VRChatに出会った。VRChatで怪獣のアバターを纏っている時は、こんな不安を忘れることができた。俺はVtuberで、人気者で、友達がたくさんいたからだ。

ここに集まるのは俺と同じ、発達障害ぎみで社会不適合なオタク連中なのだと信じていた。楽しかった。俺は承認欲求のままVtuberである自分を振り回した。

オタクとしての俺の知識を見せびらかすほどに、みんなが俺を評価してくれる。やっと、救われた気持ちになった。俺はずっと俺自身を評価されるべき人間だと思ってきた。一般社会にはびこる無教養でなんの面白みのない連中が、俺の凄さを理解できないだけなのだと信じていたから。全部が上手くいく気がした。

だが、変化が始まった。俺の周囲ではフレンドたちが次々と恋愛関係になった。そして、みんながエロいことをしているらしいという断片的な噂。俺はまた世界から弾き出される。みんながお互いに撫で合って癒しを得ているのに、俺は相変わらずアニメや映画の話をすることしかできない。

みんなリアルとは違う自分になって、幸せや癒しを享受していた。一方、俺はリアルでもオタクなのにVRでもオタク。こんな醜いオタクでなければ。何度もそう思ったはずだったのに。目立ちたくて緑色のバケモノになってしまったことが間違いだった。俺の逃げ場は世界のどこにも存在しない。 

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オタゴンです!

俺はいつも仕事が上手くいかない。だから疲れている。最近はHMDを付ける元気すらない。VRCでは自分のインスタンスに引きこもるばかりだ。

そんな中、先日VRCで友人とバーチャル性生活に関する話題になった。友人はどうやら相当“遊んでいる”らしく、興味を示す俺に行為中の動画を見せてくれた。言葉でのみ語らえるバーチャル性生活とはなんなのか。俺は幸せや楽しさを感じられない、ショボくて吐き気を催すような嫌悪できる映像であることを願った。

しかし、俺の矮小な願いは完膚なきまでに砕かれた。

詳細を書くことはできないが、みんながエロいことをしていた。俺は茫然とした。羨ましいと感じてしまったから。高校生活の時と同じ。みんな俺の目の前では平然としながら、きっちりと俺にはできないことをやっていたのだ。俺は俺が知らない間に、世界の外側に取り残されている。みんなができることを、俺だけが全然できない。VRの世界でならそんなことはないと信じていたのに。俺はいつの間にか、あの日の教室に引き戻されていた。俺はこんな気持ちになるためにVRに来たわけではなかったはずだ。

だいたい、何もかも間違っている。

フォロワー1000人にも満たなければちょっと可愛いアバター着てるだけの連中が恋愛してエロいこともできるのに、なぜフォロワー1500人チャンネル登録者1000人越えで人気者のこの俺がこんなにも苦しまなければならないのか? 俺の方が絶対に面白くてオタク的教養のある素晴らしい人間であることは明白ではないか。VRでの俺は、教室の隅で孤独に菊地秀行を読んでいたころの俺ではないはずなのに。今の俺には、間違いなく愛されるべき資格がある。俺を甘やかしてくれる美少女さえいれば、俺は今頃全Vtuberのトップに立っていたはず。俺はすごいやつだ。

妖魔戦線 妖魔シリーズ (光文社文庫)

妖魔戦線 妖魔シリーズ (光文社文庫)

 

思えば、大学二年くらいで行かなくなった映画研究会でもそうだった。俺は同期の中で誰よりも映画を観ていたし、頑張ってたくさんPVや映画を撮った。なのに彼女ができなかった。女はたくさんいた。まともに映画も見なければ撮りもしないような奴にだけ彼女ができて、俺は認められなかった。本当は映画なんか撮れなくてもいいから、彼女が欲しかった。

VRChatでもそうだ。俺が機動戦士ガンダムの第一話がいかに素晴らしいか解説してやっても、誰も俺にキスをしてはくれない! 俺がどんなにジョニー・トーセルジオ・コルブッチの映画について解説をしても、誰も俺を「すごいね」と言って抱きしめてくれない!! 俺を見ろ!! Witness me!! 昨日だって俺は風邪で痛む頭に苦しみながら、必死に蓮實重彦の『シネマの記憶装置』を読んで教養を身につけようとしていたんだ。でも蓮實重彦読んだって、誰も俺の手を握ってはくれない。そんなことわかってる。ていうか蓮實重彦ムズすぎる。文章そのもは面白いから読めても読解ができねえ。つまり、こんなに努力している俺に誰も添い寝してくれないVRChatは絶対におかしいのだ。でなきゃ今日までなんでこんなにアニメ見て映画見て本読んできたか意味がわからなくなってしまう。俺、なにか間違ったこと言ってますか?

シネマの記憶装置 新装版

シネマの記憶装置 新装版

 

最近はずっとこんなことに悩んでいるせいで、仕事も動画制作も全然手につかない。日がな一日、フレンドと一緒に撮ったスクショを見ながら妄想に耽ることしかできない。もしかしたらあの時、ああ言っていればもっといちゃつけたんじゃないかなどと考えてしまう。これを見ているフレンドのお前に告ぐ。お前と撮ったスクショもいつも見ているからな。自分だけ関係ないと思ったら大間違いだぞ。逃げられると思うなよ。俺、こんなこと書くから避けられるんだな……。

てかジオウの最終回はつまらねえし、スパイダーマンMCU離脱するし、山戸結希の『ホットギミック』見逃したし、保険の書類は面倒だし、金ないし、熱があって頭も痛いんだよ。しかも仕事が上手くいかねえ。全部中身が男性の美少女に構ってもらえないということが原因に違いないと思う。こうして俺は終わっていく。なんて惨めなんだ。もっと俺に構え。とにかくみんなが羨ましい。ああ、俺も最初から美少女アバターだったなら。みんなにもっと撫でられたい。エロいことがしたい。俺は性欲モンスターだ。捨て去りたかったはずのコンプレックスが、VRの世界でもまったく同じ形で俺の目の前に立ち現れている。俺はどこに逃げればいい?今年で23歳にもなるのに、こんな中学生みたいな悩みに本気で頭抱えてる童貞の自分が嫌すぎる。早く大丈夫になりたい。

大丈夫 (Movie edit)

大丈夫 (Movie edit)

 

でも、こんな俺にだってまだプライドがある。

これらの愚痴を鍵垢でも作って、限られた身内だけに垂れることだってできる。でも俺はそんなことしない。俺の知らないところで鍵垢を作って、その中で俺を仲間外れにしてエロい話してるクソ妬ましい連中と俺は違う。なぜなら庵野秀明が『スキゾ・エヴァンゲリオン』のインタビュー内で宮崎駿の『紅の豚』を“パンツを脱いでいない”と批判したことを、俺は知っているから。

庵野先生、俺はパンツ全脱ぎします。

俺は大学時代の同期すら見ているこのブログで、全てをぶちまける。少しでも多くの人間にこの文章を読ませ『キモい』と思わせることで、“バーチャル性生活”という言葉の品位そのものを可能な限り貶めてやる。少なくともこの文章を読んだ人間くらいは、“バーチャル性生活”という言葉を聞く度に緑色のバケモノの顔が脳裏を掠めるようにしてやりたい。これが俺の最後の抵抗だ。俺は自称Vtuberで中身が男の美少女に抱きしめてもらいたい23歳で実家暮らし体重115kgのオタク成人男性。俺を見ろ。

庵野秀明 スキゾ・エヴァンゲリオン