オタゴン無法地帯

Vtuberオタゴンのブログです。動画にするほどじゃないけどツイートには長すぎることを書きます。

先輩が俺の童貞を奪おうとしてくる

~前回のあらすじ~

どうも、23歳で実家暮らし体重115kgの成人男性オタゴンです。4000字かけて『セックスさせろ』って書いたら1800RTもされる結果になりました。しかもリプライ欄に見当違いな説教野郎共まで湧く大惨事に発展。でも殺意で性欲を忘れさせてくれたことには感謝しなければいけませんね。

otagon.hatenablog.com

これだけ拡散されたんだから複数回に及ぶ性交渉の機会が俺にも与えられるはず。間違いない。そんな時、先輩からとんでもないLINEが飛んできた。結論から言うと、俺は先輩に童貞を奪われてしまうかもしれない。

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AV出演強要の様子

俺が先輩と呼ぶこの人の性別は、もちろん男だ。もしかすると俺に女の先輩がいて、その人に迫られているという空疎な夢物語をこの記事の見出しから連想した人もいるかもしれない。だが安心してほしい。仮にそういう状況になっていたとしたら、俺はブログになんか書かずにこっそりヤっている。俺はセックスができない。だからしょうがなく文章を書く。

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ナニモンだよ……

大学の映画研にいた頃、俺は先輩に出会った。そして出会ってから5年ほど経った今でも仲良くさせてもらっている。

想像とは少し違ったかもしれない。だが“先輩が俺の童貞を奪おうとしてくる”という見出しに嘘はない。なんと先輩は謎の人脈でオタゴンとのセックスを了承する女性を見つけ出してきて、まるでショッカーが怪人を送り込むかのごとく俺に差し向けようとしている、というわけだ。恐ろしい話である。もちろん俺はその女性の名前も知らなければ顔すら見たことがないし、恐らく女性もブログ以外で俺のことは知らない。編集させろという口ぶりから察するに、先輩は俺の童貞喪失セックスで自主制作AVでも作りたいのだろう。端的に言って極悪すぎる。俺の童貞はアンタの玩具じゃないんだぞ。先輩にカメラを向けられながら童貞喪失なんかしたら心にド級PTSDを抱える可能性が高い。ベトナム帰還兵オタゴンが爆誕してしまう。

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だが悲しいことに、あの記事を書いた後で俺に飛んできたLINEやDMの中で、確実にセックスに繋がると言えるのはこれだけだった。1800RTもされたのだから誰かが何かするだろう。みんながこう言った。俺に告白する人が現れるだろうと言った人もいた。俺はこの2週間、ずっとその言葉を信じてきた。お前らが忘れても、その無責任な言葉を俺は忘れなかった。1800RTという数字は、確かに俺が誰よりも愛されるべき人間であることの証明だったはず。それなのに告白どころか、俺に機動戦士ガンダムの1話を解説してほしいと懇願する美少女すら現れなかったのだ。もう何も信じられない。俺の文章は無力だった。

正直、この先輩からの申し出を受けてしまいたい気持ちが強い。たとえ心が壊れることになったとしても、俺はセックスがしてみたい。今、人生で最も近くに風俗ではないセックスがあるのだから。後は俺が覚悟を決めるだけ。でも同時に、俺には“先輩のおかげでセックスできた自分”を受け入れられない理由があった。それを知ってもらうためには、俺と先輩の出会いを語る必要がある。

最終話 宇宙(そら)を駆ける

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先輩は俺が好きな映画を全て知っていたし、俺は先輩が好きな映画がほとんどわからなかった。

先輩は俺の二つ上の代で、サークル内でも珍しい他大学から参加している部員だった。だからなのか、他の部員に比べて先輩の纏う雰囲気はどこか特別に感じた。黒色に少しウェーブがかかった髪。メガネの奥の目は丸くぱっちりとして、年齢よりいくらか幼い印象を与える。童顔で痩せ気味。第一印象はいけ好かないサブカル野郎といったところ。身長は俺の頭一つぶん低く、一緒に行動するとよく俺の方が先輩だと間違われた。

まだ親交の少なかったある日、先輩は突然「一緒にドキュメンタリー映画を撮ろう」と俺を部室に呼び出した。それが初めての映画撮影だった。部室につくと先輩のほかに上級生の映研部員が一人だけ。俺は嬉しかった。先輩は一年生の中で俺だけを選んで呼んでくれたのだ。頑張らなければと意気込む俺に先輩がこれから撮る映画の内容を語った。

「過去に映研部員をいじめた奴を特定して、今から俺とお前で襲撃する。それでその様子を撮影する」

一気に震えが止まらなくなった。映画を撮るつもりが暴力行為の片棒を担がされようとしていた。なぜ俺を呼んだのかと聞くと先輩は「お前が一年の中でいちばん映画を見ているから」と答えた。えっそれ関係なくないですか。戸惑う俺をよそに先輩は部室に来ていたもう一人の映研部員にいじめられていた頃の話を聞き始める。やがてターゲットは現在、埼玉で建設作業に従事する労働者であることがわかった。先輩は泣きそうになる俺を連れて埼玉へと移動を開始。電車内でターゲットが打たれ強いこいとがわかってくる。工具に頭をぶつけて怪我したことを自慢するような奴だった。俺と先輩のオタクパンチと鋼鉄の工具、どちらが強力かは明白だった。このあたりから先輩も動揺し始めていた。俺たちの攻撃が通用しない可能性は非常に高かった。

「“タクシードライバー”って見たことあるか?」

先輩が突然俺に聞いてきた。これから暴力行為に赴こうというのになんでこの人は映画の話なんか振ってくるんだ? このままでは敵に勝てないと判断した先輩は俺にある提案をもちかけてきた。

「モヒカンにするぞ」

物理で勝てないなら見た目で脅せばいいというわけだ。よく考えれば本質的な問題は何も解決していないのだが、その時の俺には名案に思えた。俺たちはトラヴィスとなり我が同胞たる映研部員を辱めた仇敵に裁きの鉄槌を下すのである。俺と先輩はさっそく埼玉にある映研部員の実家に上がり込み、犬猫用のバリカンを借りて風呂場でお互いの頭を刈った。狂人二人を家に上げた側の気持ちを考えると申し訳なさでいっぱいになる。だが俺たちはモヒカンにするためだけに1000円カットに行く金すら惜しかった。

結局この後はターゲットに出会えず、お互いの頭をモヒカン刈りにし合う男たちの様子を映した怪映像だけが撮れ高として残った。今思うと本当にバトルにならなくてよかった。怖すぎる。その後の数か月、俺と先輩は大学内でモヒカン頭のまま過ごした。この一件が俺と先輩の絆を強固にした。モヒカンの絆だった。

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当時のオタゴンの頭部

それから俺は、破天荒な先輩の後ろをついて回って色々なことをした。大学の教室を借り、授業にも出ず朝から晩までプロジェクターで様々な映画を見た。先輩から借りた漫画や小説ばかり読んでいた。新文芸坐の戦争映画特集やアニメスタイルオールナイトに、バクシーシ山下の発禁をくらったAVの上映会にも行った。渋谷シネマヴェーラ早稲田松竹、目黒シネマや下高井戸シネマと、たくさんの名画座を二人で回った。初めてラブホに入ったのも、先輩と自主映画を撮るためだった。大学のミスコンのPV撮影も二人でやって、どっちの撮ったミス候補が票を取るかで勝負した。ここには書けないようなことをいくつもやった。何もかもが、先輩に教えてもらうまでは知らないことばかりだった。

先輩はいつだって俺にとってのタイラー・ダーデンだ。ここ最近、ミシェル・ウエルベック大江健三郎蓮實重彦を読むようになったのだって、実は先輩の影響だった。ロマンポルノも大学時代に先輩に教えてもらった。映画の趣味も本の趣味も、俺は先輩の猿真似をしているに過ぎない。

黒沢清岡本喜八増村保造小林勇貴岩井俊二平野勝之バクシーシ山下出崎統鶴巻和哉山田尚子湯浅政明も、先輩が好きだったから見るようになった。

先輩が褒めた映画を同じように褒める時、俺は絶対の自信に満ち溢れていた。逆に自分が好きだと感じた映画を先輩が好まなかった時、俺は足下が全部崩れるかのような不安に襲われた。いっそ先輩の触れる全てのコンテンツを俺も見聞きできればどれほど良かったか。でも現実は違う。俺は先輩の持つ含蓄の1割もモノにできてはいない。先輩の抑えている範囲は広すぎる。俺は先輩の劣化コピーだ。

俺は大学一年の頃から今までずっと、絶対に先輩に勝てないという敗北感を抱いて生きてきた。

先輩にあって俺にないものはたくさんある。まず先輩は女にモテる。とにかく先輩の周りには女が多い。顔も良くて知識の幅も広いので、当然と言えば当然だ。加えて様々な方面に顔が利いて、学もある。先輩の知り合いに会う時、俺はいつも先輩のオマケだ。

そんなにスゴい人なのに先輩は俺に優しいし、俺をリスペクトしてくれる。先輩の周りには俺より有能な人なんてたくさんいるのに。大学の時もそうだった。先輩はずっと俺を対等に扱ってくれた。俺を孤独から救って強くしてくれる。

でもそれが辛い。俺は色んな場所で自分の知識を話すけど、ほとんどは先輩が俺に話してくれたことの受け売りだから。みんなは俺をすごいと言うが、本当にすごいのは先輩の方だ。俺は先輩を憎いと思ってしまう。あいつさえいなければ、俺は俺の素晴らしさを信じることができる。俺はいつもあいつに与えられてばかりだ。悔しい。でも先輩がいなくなったらきっと、俺は今よりずっと弱くなる。

さて、ここまで書いて最後に「だから俺の童貞を先輩に渡すことはできない!」と高らかに宣言してこの記事を締められたらどれほどよかったか。これだけ負け続けた末に童貞まであいつに奪われたらと思うと悔しくてたまらない。それは本心だ。でも俺はそこまで思い切りの良い高潔で清廉な童貞ではない。というかそんな人間だったらそもそもこんなにブログ書いてまで悩まない。そう、100%絶対に先輩の手を借りずにセックスしてやるぜとぶち上げる自信が俺にはない! 独立独歩の道を歩む自分の背中を、俺はどうしても思い浮かべることができない! こういう時に一歩を踏み出すために俺はストリップに行ったはずなのに。女性の裸体は俺の世界をもっと鮮やかにしてくれるはずだった。しかし、女性器を見たところで心の弱さは守れないのだ。

「そりゃあね、僕だって考えたさ。その気になれば、毎週だって女は買えるだろう。土曜の夜なんてうってつけだ。そうすれば僕もようやくそれができるだろう。でも同じことをただでやれる男もいるんだぜ。しかもそっちには愛までついている。僕はそっちでがんばりたいよ。今は、もう少しがんばってみたいんだ」

ミシェル・ウエルベック『闘争領域の拡大』より

というか、何もかもがおかしい。

俺は初めて文章でバズった。みんなが俺の記事を面白いと言ってくれた。それなのに俺の現状はちっとも良くなってない。それどころか先輩が俺でAVを撮ろうとしてくるせいで俺の悩みは深くなるばかりだ。どうしてこんなことになる? 俺は少しでも何かを良い方向に変えたくてあの文章を書いたのに。結局俺の願いも望みも何一つ果たされない。何もかも無意味。全部が悪くなっていく。また頭をモヒカンにしたくなってきた。全部ぶっ壊したい。